はんぶんこ
 空はすっかり灰色の雲に覆われていた。
 辺りを見回すと一面の銀世界。
 吐く息は白くなって、気温の低さを際立たせている。
「はぁ…寒いですね、白蓮さん」
 私―――アリス・マーガトロイドはすっかり冷たくなった両手をこすり合わせながら、隣を歩く白蓮さんに声をかけた。
「そうね、もうすっかり冬って感じね」
 私の言葉に頷く白蓮さんの息も、白くなって消えていく。
 空からは今も雪が降り続いていて、歩いてきた足跡がくっきりと残っていた。
「でも、確かに寒いですけど、一面の銀世界と言うのも綺麗ではないかしら」
 その白蓮さんの言葉に、私は改めて辺りを見渡す。
 この季節は気温も下がり、雪も降り続いてとっても過ごしにくい気候になる。
 だけどこうして降り続く雪は世界を真っ白に染め上げ、こうも美しく変えてしまうのだ。
「そう…ですね。この季節はとっても寒いですけど、空から降ってくる雪の結晶やこの真っ白な景色は、とっても綺麗です…」
 普段は見逃してしまうけど、意識してみると思わず見とれてしまうほどの綺麗な景色が、目の前に広がっていた。
 雪化粧をした木々や足跡一つ無い真っ白な雪原、空から降り注ぐ美しい雪の結晶。
 それら全てが私の視線を吸い込んで離さない。
 私が白銀の景色に見いっていると、白蓮さんのいつもの優しい声で現実に引き戻される。
「ふふっ、この場に文さんが居ればよかったわね」
「文…ですか? 確かに、この景色は写真として残しておきたいかもしれませんね」
 季節が変わるまでの間、この情景は変わらずここにあるかもしれない。
 それでも、この眺めは目に焼き付けておくだけにしておくには勿体無いと思う。
「ううん、違うわよアリスさん。私が言いたかったのはね―――」
 私の言葉を聞いた白蓮さんは、なぜか可笑しそうにいたずらっぽい笑みを浮かべる。
 はて、なにか変なことを言ってしまったんだろうか?
「―――今のアリスさんの横顔があまりにも綺麗だったから、写真に残しておきたいなって思ったの」
「なっ!? なな、なに言ってるんですか…! そ、そんなこと急に…」
 不意打ちで言われたその言葉に、顔が熱くなるのを感じる。
 ほ、ホントに白蓮さんは、急に恥ずかしいこと言い出すんだもん…。
「ふふっ、でもそう思ったのは本当よ? この綺麗な景色よりもずっと素敵で、今の一瞬だけのものにしてしまうには、あまりにも勿体無いってね」
 この景色よりも素敵だなんて、凄く言いすぎだと思う。
 そもそも私の顔なんて、写真に残しておくほどのものじゃないのに…。
 …もちろん、こんなこというと白蓮さんから注意されてしまうから、口には出さないけど…。
「だけど私の目にしっかり焼き付けたから、それでいいことにしましょう。それに、今のアリスさんの表情を独り占めできたのだと思えば、とっても嬉しいことですしね」
「そ、そんなこと…突然言われても……は、恥ずかしいです」
 あまりに恥ずかしい白蓮さんの言い回しに、思わず彼女の視線から顔を逸らしてしまう。
 たまに白蓮さんはこんなことを言ってくれるのだけど、だからと言ってそう簡単になれることなんて出来ない。
 まぁ…その、そんなふうに白蓮さんから褒めてもらえるのは、う…嬉しいけど…。
「さて、少し急ぎましょうか。ちょっと風も強くなってきたし」
 少し間を空けてから、白蓮さんはそう言って私を促す。
 確かにちょっと風も強くなってきたし、あんまりのんびりしていては風邪を引いてしまうかもしれない。
「そうですね、急ぎま―――くしゅんっ」
 急ぎましょう、と言おうとしたところでくしゃみをしてしまう。
 どうやら、手袋をしていないせいで、手から冷えてきてしまったみたい。
 もちろんわざと外してきたんじゃなくて、白蓮さんとの待ち合わせに遅れそうになって慌てて出てきたせいで、忘れてしまったんだけど。
「大丈夫アリスさん? やっぱり手袋貸しましょうか?」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
 ホントはちょっとかじかんできちゃったんだけど、私のせいで白蓮さんにまで寒い思いをさせるわけにはいかない。
「う〜ん………あっ、じゃあこうしましょう? 反対側だけ貸してあげるわ。ふたりで片方ずつ着ければ問題ないんじゃないかしら」
 少しの間考え込んでいた白蓮さんが、何か思いついたように左手の手袋を差し出してくる。
「えっ、でもそれじゃあ白蓮さんの左手が…」
 例え片方だけでも白蓮さんに負担を強いりたくはない。
 私は断ろうとするけど、白蓮さんは笑顔で首を横に振った。
「大丈夫ですよ。手袋なんてなくても―――」
 そう言いながら白蓮さんは私の右手に、そっと左手を重ねた。
「―――ね? 手袋をするよりも、このほうがずっと温かいでしょ?」
「は、はい……そう、ですね…」
 笑いかけてくる白蓮さんに、ドキドキで声が震えそうになりながらもなんとか答えを返す。
 繋いだ手から白蓮さんの温もりが感じられて、顔の熱がどんどん上がっていく。
 温かいと言うより暑いと思ってしまうほどに、体温は高鳴る鼓動のせいで高まっていた。
「手を繋いだだけで真っ赤になっちゃうなんて、やっぱりアリスさんは可愛いわね」
 ニコニコ笑いながらそう言う白蓮さんの言葉に反論したくなるけど、意識が白蓮さんと触れている右手にいってしまい、言葉を続けられない。
 するとそんな顔を真っ赤にしているだろう私の胸に―――
「そんなアリスさんが大好きですよ」
 ―――なんて、白蓮さんの止めの一言が突き刺さる。
「びゃ、白蓮さん……あぅぅ」
 顔の温度が湯気が出てくるんじゃないかと言うくらいに、熱くなる。
 なにか言おうとしたんだけれど、結局縮こまってしまって何も言うことができなかった。



 そのあと二人で手をつないだまま帰り道を歩いた。
 風は最初よりも強くなってきていたけど、寒いなんて思わない。
 むしろ繋いだ手のおかげでとっても身体がぽかぽかして、逆に熱いと感じるくらい。

 ちょっと恥ずかしかったけど
 思わず顔を隠したくなったけど
 それでもこの手から感じるぬくもりは
 とっても嬉しくて、離したくなかった

 真っ白な世界に、影二つ
 真っ白な道に、足跡二つ
 やがて繋がり、影一つ
 きっと心も、繋がってるよね―――






<あとがき>
 ニゲルさんのお誕生日お祝いに書いた白アリです。
 ちょっと早い冬のネタになりますが、もう寒いからいいよね?
 この手袋はんぶんこネタは、結構私のお気に入りのネタでして、
 好きなカプが出来ると、結構な確率でやらせてます^^
 それにしても、白アリ書くの2回目ですが、まだ慣れないですね〜^^;
 書きにくい…とまではいかないんですけど、まだゆかれいむとかマリアリほど
 書くのに慣れてはいないです^^;
 こんな低クオリティですみませんニゲルさん…orz
 今度ぜひ白アリの上手い書き方を教えてください。お願いしますm(_ _)m
 ではニゲルさん、お誕生日おめでとうございまーす!






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