大切な温もり
「お〜い、大ちゃ〜んっ」
 一面に敷き詰められた白の絨毯を踏みしめながら、気に背中を預けてあたいを待ってくれている彼女の元へと駆け寄る。
「あっチルノちゃんっ! おはよ〜!」
 私の声に気づき、笑顔を浮かべながらこっちに手を振ってくれた。
 そんな大ちゃんの様子が嬉しくて、あたいも笑顔で手を振り返す。
「今日はチルノちゃん、来るの早かったねっ」
 あたいが大ちゃんの隣までやってくると、そう言って大ちゃんは嬉しそうに笑った。
 というのも、あたいはいつも待ち合わせ時間ギリギリか、遅れてくることが多いからだ。
 だけど今日は、きちんと時間の15分ぐらい前には待ち合わせ場所につくことが出来た。
「だけど、やっぱり大ちゃんのほうが早いのね…」
 大ちゃんと同じくらいに来れたと思ったのに、大ちゃんのほうがとっくに待ち合わせ場所に来ていたみたいでちょっと悔しい。
 今日は大ちゃんより早くに来て、遅いわよっ! って言いたかったのに…。
「うん、だって私はいつも30分ぐらい前に来てたからね」
 なるほど、それじゃあどう頑張っても、あたいじゃ大ちゃんより早く来れそうにない。
 そもそも、待ち合わせ時間の30分も前に来ちゃったら、暇で暇でしょうがないと思うんだけどなー。
 だけどそんな憂鬱な気持ちも、次の大ちゃんの一言で吹き飛んでしまった。
「それにね、今日は一杯チルノちゃんと遊べるかと思うと嬉しくて、いっつもより早く来ちゃったの。だからね、チルノちゃんが早く来てくれてとっても嬉しい!」
 すごく嬉しそうな笑顔を向けられて、思わずドキッとしてしまう。
 今は冬のはずなのに、まるでここだけ春が来たと錯覚してしまいそうなほど、明るくて温かい大ちゃんの笑顔。
 そんな笑顔を見ていたら、心の中から温かくなってきて、自然とあたいも笑顔になれた。
「うん…実はあたいもね、大ちゃんと今日からは思いっきり遊べるのが嬉しくて、頑張って早起きしてきたんだ」 
 時間より早く来れた理由は、本当のところそれが一番大きかった。
 今までは冬になると、あたい以外の皆は厚着をしていたし、長い時間一緒に遊ぶことなんて出来なかったのだ。
 冬はただでさえ寒い上に、あたいの身体からは常に冷気が出ていて一緒に居ると凍えてしまいそうになるから。
 みんなの前では気にしていない振りをしていたけど、本当は自分が仲間はずれになったみたいですごく寂しかった。
 だけど、今は寂しくなんかない。
 そんな私の気持ちに、大ちゃん気づいてくれたから。
 もちろん気づいてくれただけではかえって危なくて、私に気を使って薄着で遊んだりしたせいで風邪を引いたりもしたこともあった。
 でも今はそんな心配はない。
 その訳は、大ちゃんが今もつけているマフラーだ。
「うん、わたしも本当に嬉しい。チルノちゃんがくれたこのマフラーのおかげで、ずっとチルノちゃんと一緒に居られるんだもん」
 もちろん、ただのマフラーを着けただけで、あたいの冷気や寒さが感じなくなるわけはない。
 だけどこのマフラーは特別で、霊夢からもらった不思議な毛糸で編んだマフラーで、これをつけていると寒さが平気になるらしい。
 最初は半信半疑だったけど、大ちゃんの様子を見ていればその効果が本物だと言うことがわかる。
 あとから霊夢にきいてみたら、あの毛糸には紫の力が込めてあって、寒さと暖かさの境界を操れる…らしい。
 難しすぎて、あたいには何を言っているのかさっぱり分からなかったけど。
 でもこれのおかげで大ちゃんは、冬の日でもあたしと同じような薄着で遊べるし、一緒に居ても凍えたりしなくてすむようになったんだ。
 これであたいも一人じゃない。
 今まで一緒に居ても、どこか仲間はずれにされているような気がしていたけど、もうそんなことはないんだ。
 仲間はずれになることも、自分の大切な―――大好きな大ちゃんを、強すぎた力のせいで傷つけてしまうことも。
「そうだっ。私ねこのマフラーのお礼にこれ作ってきたのっ」
「これは…マフラー?」
 大ちゃんがその言葉とともに取り出したのは、あたいがあげたマフラーと色違いのマフラーだった。
「うんっ、私だけ貰ったままじゃ悪いし、やっぱり冬は寒いし―――あっ」
 そこまで言って大ちゃんは思い出したように、口を押さえる。
「ご、ごめんっ…チルノちゃんにはこういうのいらないんだったよね…それなのに私……」
 申し訳なさそうに肩を落とし、しょんぼりしてしまう大ちゃん。
 きっとあたいが寒さを感じないと言うことを思い出したんだろう。
 あたいは自分だけ寒さを感じないせいで、皆との違いを感じて悩んでいたことを大ちゃんは分かっていてくれていたから。
 きっと大ちゃんは、それなのに自分はそのこと忘れマフラーを作ってきてしまったと、後悔しているのだろう。
 でも、そんなことはない。
「ううん、そんなことないよ。大ちゃんがあたいのために作ってきてくれたマフラーだもん大切に使わせてもらうよ」
 そう言って大ちゃんからマフラーを受け取ると、自分の首に巻いてみた。
 サイズはあたいにぴったりで、首をすっぽり覆えてとってもあったかい。
 あたいは寒さを感じないけど、だからってこういうものをもらって嬉しくないわけがない。
「確かにあたいは寒さとかって感じないけどさ。でもね、あったかいのはちゃんと感じるし、そのほうが嬉しいもん」
 寒いのを感じないから暖かさまで感じないわけじゃないし、冬の寒さの中でいるのもいいけど、こんな温かさに包まれるのも嬉しいのだ。
「それにそれが、大ちゃんのくれたあったかさならもっと嬉しいから」
 このマフラー(温かさ)は大ちゃんがくれたもの。
 あたいのために大ちゃんが作ってくれた、とっても大切なものなんだ。
「チルノちゃん……」
 そんな優しさに包まれていると、心までポカポカしてくるみたい。
 とても嬉しくて心地の良い温もり。
 寒さを感じなくても、この感覚は手放したくない。
 そして―――
「行こう大ちゃん、今日は思いっきり遊ぼうっ!」
「うんっ!」
 ―――この右手に繋いだ温もりも。
 


 あたいは最強だから、弱い奴のことなんて分からなかった
 あたいは最強だから、一緒に居るだけで傷つけてしまっていた
 力が強すぎて、彼女と一緒にはいれなかった
 このまえまでは―――

 今ではしっかり理解できる
 今では守ってあげられる
 今では一緒に歩いていける
 だからこそ―――

 ―――これからはずっと、一緒に居よう






<あとがき>
 今回参加しましたチルノアンソロ「チルノオリンピック〜ちるのあんそろ200H〜」の
 発行記念として書いたチル大小説です。
 一応、チルノアンソロに載せた小説の続き物みたいになってるので、
 一部読んでない方は分からない部分もあるかもしれませんが、わからなくても
 それほど読むのに支障きたさないレベルだと思うので、
 大丈夫だとは思うのですが、読みにくいと言う方が居たら申し訳ないです^^;
 まぁ、チルノアンソロのほうを読んでいただいた方への
 お礼小説っていうのもあるので、ご了承ください。
 う〜ん、それにしてもちゃんとチル大になってるだろうか…?
 ちゃんと書くのは2回目なんで、まだしっかり掴みきれてない感じがします;;
 要練習ってことですね^^






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