星空の下で
「はぁ、星なんて沢山あるものなのに、全然流れないな」
 星空を見上げながら、魔理沙はつまらなそうにため息をついた。
 私と魔理沙は、魔理沙が見つけたという星の見える丘に来ている。
 なぜこんなところに来ているかというと、夕方になってから突然魔理沙が家を訪ねてきて、
「なぁアリス、今から流れ星見に行かないか?」
 と、誘われたのだ。
 特に予定もなかったし、私はついていくことにした。
 それに、魔理沙と二人っきりで星を見れるなんて久しぶりだったから、ちょっと嬉しかったし…。
 久しぶりと言うのは、実は魔理沙と私は付き合っていて、以前にも二人で星を見に来たことがあったのだ。
 告白されたのはそのときだったんだけど、結局星はあのときしか一緒には見に来ていない。
 だから、あのときのことを思い出していたりしていたのだが、案の定1時間ぐらいしか経っていないのに
魔理沙は飽き始めて、雰囲気は台無しだ。
「まったく、そんなすぐに見れるわけがないでしょ? そんなありふれたものだったら、
誰もそれに願いを懸けようなんて思わないわよ」
「確かにそうだけどさ、アリスは暇じゃないのか?」
「まだ1時間ぐらいなのになに言ってるのよ? だいたい魔理沙が誘ったんじゃない」
 早くも空を見るのをやめている魔理沙には、正直呆れてしまう。
 …まぁ、私は魔理沙と一緒に居られるだけで満足だから、飽きなんてしないけど、とはちょっと恥ずかしくて言えないけど。
「うぅ…そうなんだけどさ。う〜ん、そうだ!」
 私の指摘に少し頭を悩ませていた魔理沙だが、何かを思いついたように声を上げる。
 そして何を思ったのか、体の向きをこちらに向けて、私の顔をジッと見つめてきた。
「…な、なにしてるの魔理沙?」
「うん? 星空を見てるのも飽きたから、アリスを見ることにしたんだ」
「な、なに言ってるのよっ? わ、私の顔なんか見ても楽しくなんかないわよっ」
 不意打ちな魔理沙の行動に、顔が一気に熱くなる。
 恋人をやっていて多少は慣れたつもりだったけど、どうしてもこういうのには動揺してしまう。
 そんな私のうろたえように、魔理沙はころころと笑って、
「楽しいぜ? アリスは表情がくるくる変わるからな。見てて飽きないぜ」
 なんて言う。
 だ、誰のせいで表情変えるはめになってると思ってるのよっ!
「そ、そんなことしてると流れ星が流れても、見逃しちゃうわよっ。願い事できなくても知らないからっ!」
 それ以上赤くなった顔を見られたくなくて、そっぽを向く。
 こんなことしても、どうせ魔理沙は無理やり見ようとして来るんだろうけど。
「……それもそうだな。もう飽き飽きだけど、もうちょっと頑張ってみるか」
 ………あれ?
 また覗き込もうとしてくるだろうと身構えていた私は、肩透かしをされた形になる。
 さっきはあれだけ飽きた飽きたって言ってたのに、どうしたのかしら?
「この願いだけはさ、絶対叶って欲しいからな…」
 少し真面目な顔で空を見上げながら、魔理沙は呟いた。
 その普段はあまり見ない横顔に、不覚にもドキッとしてしまう。
 さっきまでやる気をなくしていた魔理沙を、こんなにもやる気にさせてしまうなんて、一体どんな願いなんだろう…?
「ねぇ魔理沙。そのお願いって、そんなに大事なものなの?」
 気づいたら私は、そのことを聞いていた。
 魔理沙にとって大事なお願い。それがなんなのか、どうしても気になったから…。
「う〜ん、ちょっと恥ずかしいんだけど…。アリスになら教えてもいいかな?」
 私の声に、魔理沙は恥ずかしそうに頬をかくと、こちらに向き直った。
 そして、さっきの私がときめいたのと同じ表情で、口を開く。
「それはさ―――」
 魔理沙の口から言葉が出る瞬間、キラリと後ろの空に輝きが見えた。
 あれってもしかして、流れ星じゃっ!?
 慌ててそのことを口にしようとして―――
「―――アリスのことを、世界で一番幸せな女の子に出来ますように…って願いなんだ」
 ―――その瞬間、心臓が止まりそうになる。
 ……………えっ、それって……まさか…!
「ま、まままっ魔理沙っ!? そ、それってあのそのっ!」
 体全身が、特に顔なんか、本当に湯気が出てるんじゃないかと思うほど熱くなる。
 鏡なんて見なくても分かる。私の顔は今真っ赤に違いない。
 だけど、今そんなことはどうでもよくて、目の前の魔理沙のことしか頭になかった。
 魔理沙はそんな混乱している私に優しく笑いかけると、そっと両肩に手を置き目をじっと見つめながら、ゆっくりと告げる。
「今の私は魔法使いとしても、人間としてもまだまだ未熟だけどさ、絶対アリスのこと、世界中の誰もが羨むぐらい、
幸せな女の子にしてみせる。だからさ、ずっと一緒に……いてくれないか?」
「魔理……沙」
 鼓動がまるで、魔理沙にまで聞こえてしまうんじゃないかってくらいに、高鳴っている。
 いつもなら照れ隠しの言葉を言ってしまうけれど、今回は素直に受け取ることが出来た。
 だってその言葉には、とっても気持ちが籠もっていたから。
 ―――魔理沙の、私に対する綺麗であったかい気持ちが。
「うん、その……わたしこそ、これからもよろしく…ね」
「あぁ、ありがとな。アリス」
「ううん、私こそありがとう…」
 まだ胸の高鳴りは収まらないけど、それ以上に心地いい。
 なぜなら、こんなにも心があたたかいから。
 こんなにも、あなたがそばにいるから―――
「なぁアリス。…その、いいかな?」
「えっ…? …うん、いいよ」
 照れながら尋ねてくる魔理沙に、私はその意図を察して頷き、目を閉じる。
 きっとそれは、二人で歩むことを決めた私と魔理沙の、最初に行う誓いの儀式―――
 一瞬にも、永遠にも感じられたそれを終え、ゆっくりと目を開ける。
 するとそこには、照れくさそうに笑う、愛しいあなたの姿があった。
「…愛してるぜ、アリス」
「…私もだよ、魔理沙」



 星の輝く空の下
 二人は愛を誓いあう
 未来は誰にもわからないけれど
 きっと幸せになれるだろう
 なぜなら、夜空の星がこんなにも
 綺麗に瞬いているのだから

 まるでその二人の
 これからを祝福するかのように―――




<あとがき>
 恋人同士のマリアリです。
 アリスって付き合った後も、なんとなくツンツンしてそうなイメージがあります。
 まぁ、雰囲気によってはデレそうな気もしますがw
 次はデレアリスが書けるように頑張ろうかな?
 あと、たまには乙女な魔理沙も書いてみたいですね。






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