すっかり外の景色は真っ白に染まったある日、私は家で読書をしていた。
さすがにこの時期となると部屋の中に居ても寒さを感じる。
一次読書を中断し、かじかむ手を温めるために暖炉の火に当たりながら、ふとカレンダーへと視線を移した。
今日の日付は12月24日、世間ではクリスマスイブと呼ばれている日だ。
「まぁ、私には関係ないけどね…」
人里などではこういうイベントごとがあると賑わったりしていそうだが、家からあまり出ない私には係わり合いのない話である。
そもそもそんなイベント自体、あんまり参加したいと思わないし。
だって騒がしいのとか苦手だし、なんだか疲れそうだもの…。
「そういえば、クリスマスイブには恋人が居る人は一緒に過ごすことが多いもらしいけど…」
そんな話を本で読んだことがある。
確かに去年、たまたま人里に買い物へ行った時に丁度クリスマスイブだったのだが、カップルらしき人たちが何組も歩いていたような気がした。
それも私には関係のないことだけどね…。
「はぁ…魔理沙何してるのかしら」
こういうイベントにもあいつなら参加しそうだ。
というか、賑やかなことが大好きな魔理沙のことだから、真っ先に参加してそうな気がする。
―――って、
「な、なんで恋人を思い浮かべて魔理沙が出てくるのよっ!?」
自分の考えに思わず自分で突っ込んでしまう。
べ、別に魔理沙なんてなんでもないのに、なんで魔理沙の顔が出てきたのかしら…。
ほ、ホントに、な…なんでもないんだから…。
……ちょっとだけ、多少は…その、気になるけれど…。
……………………ほ、本当は……………その、結構………す…………好き―――
「おーいっ、アリスいるかー!?」
!!?
「ま、魔理沙っ!?」
魔理沙のことを考えていたら、魔理沙本人の声が聞こえてきて飛び上がってしまう。
まさに噂をすれば影とはこのことだろうか。
それにしてもいいタイミング過ぎるし、まさか盗み聞きしてたんじゃないでしょうね…。
少し不振がりつつも、ドアを開けて魔理沙を迎え入れる。
…と。
「…魔理沙、なにその格好?」
魔理沙の格好が普段とあまりにもかけ離れていて、思わず固まってしまう。
その格好とは全身真っ赤なもこもこした服と、真っ赤な帽子。
そして背中には大きな白い袋を背負っていた。
これってまさか…。
「なにって、見りゃ分かるだろう。サンタの格好だぜ」
…やっぱり。
クリスマスする格好としてはメジャーかもしれないけど、ホントにしてくる人ってはじめて見た。
なんだか驚きを通り越して呆れてため息をついてしまう。
まぁ魔理沙らしいといえば、魔理沙らしいわね…。
「なんだよアリス、ため息なんかついて」
「ホントにあんたって、イベントとか好きよね…」
「そりゃそうだぜ! 楽しめるもんは楽しまなきゃ損だろ?」
当たり前だろ? と親指を立てて笑う魔理沙に、またもやため息をこぼしてしまう。
まぁ、魔理沙の行動としては予想通りといったところだけど…。
「なんでため息ばっかりついてるんだアリス。なんか嫌なことでもあったのか?」
「まぁ嫌と言うより、あきれ返ることはあったけどね…」
「うん?」
魔理沙は私の言葉の意味が分からず、首をかしげている。
はぁ…ホントに鈍いのね魔理沙は…。
絶対、私の気持ちなんかも気づいてないのよね…。
「どうしたんだアリス、急に下向いたりなんかして?」
「えっ? な、なんでもないわよ! そ、それより今日はそんな格好で何しに来たわけ!?」
魔理沙にズイっと顔を覗かれて、思わず顔が熱くなるを感じる。
ほ、ホントに魔理沙はなんでこんなことするのかしらっ、人の気も知らないで…!
「あぁ、そりゃもちろんアリスにプレゼントを持ってきたんだぜ!」
「へ? わ、私に…?」
予想外の言葉に不意を突かれてしまう。
プ、プレゼントって私に…!?
「あぁ、この袋の中全部だぜっ」
そういって魔理沙は背中に背負っていた袋をドサっと床におろして、袋の口を開いて見せた。
その中には小さいクリスマスツリーとかお菓子、魔導書など明らかにクリスマスプレゼントとは似つかないものが入っている。
というかこれってもしかして…。
「ねぇ魔理沙? まさかこれって、盗んできたものじゃないでしょうね…?」
「な、なんでバレたんだぜ!? まさかアリス、さとりと同じ能力をみにつけたのか!?」
「はぁ…こんな中身じゃ、バレバレよ…」
思わず今日一番のため息をついてしまう。
はぁ…ちょっとでも期待しちゃった私がバカだったわ…。
よりによってプレゼントに盗んできたもの私なんて…。
「い、いや…だってさ、盗みは私の専売特許だし。それに…」
「それに…なによ?」
少しバツが悪そうに苦笑しながら、またもや予想外の言葉を口にした。
「私あんまりお金ないけど、アリスにはちゃんとしたプレゼント渡したかったからさ…」
「えっ…?」
その一言にドキッとしてしまう。
まさか私のために、そこまで考えてくれてたの…?
「でもよく考えたら、こんなの渡されても全然嬉しくないよな…ごめんな?」
「いや、えっと…そうじゃなくて…」
まさか魔理沙がそこまで考えててくれたなんて、思いもしなかった。
そんなふうに、魔理沙が私のためにプレゼントを用意してくれたのは嬉しい。
だけどそんなふうに無理をしてなにかを用意されるよりも、私には欲しいものがある。
それは―――
「プレゼントなんて無理に用意してくれなくても、私にとっては………その、魔理沙がね……」
「うん? 私がどうしたんだ?」
そこから先の言葉がなかなか出てこない。
胸に秘めた一つの想い、今までなら伝えられずにしまってしまった言の葉を、今日こそはきちんと届けたい。
ドキドキは収まるどころかどんどん早くなっていくけれど、それでも伝えることをあきらめたくなかった。
だってこの胸の高鳴りは、このまま抑えてはいられないほどに、強くなっていたから。
「……ま、魔理沙が………その…い、一緒に居てくれれば、それがプレゼントになるのに…」
「えっ…!?」
私の言葉があまりにも予想外だったのか、魔理沙はかなりビックリした顔をしている。
私は普段こういうことを素直に言わないから、無理もないかもしれない。
自分でも素直に言えたことに驚いているくらいだ。
だけど魔理沙が私のためにここまでしてくれたから、素直に言葉に出すことが出来た。
それにもしかしたら、今日という日が勇気をくれたのかもしれない。
か、かなり恥ずかしくて、ドキドキしてきちゃったけど…。
「アリス…。ありがとな、アリスがそんな風に言ってくれるなんて嬉しいぜ。まぁ、普段からこんなに素直だと、なお嬉しいんだけどな」
「う、五月蝿いわね…。今日はクリスマスだから特別よ!」
またつい、ツンツンしてしまうけれど、なんとか自分の気持ちは伝えれたし、普段の私からすれば上出来なほうかな。
…なんか、魔理沙がニヤニヤしてこっちを見ているのが気になるけれど。
「なぁアリス、私がプレゼントでいいって言うならさ…」
「な、なによ…?」
そこまで言ったところで、ぐいっと肩を掴まれて魔理沙の元へ引き寄せられる。
そして―――
「じゃあ、これが私のプレゼントだぜ」
―――頬っぺたにキスをされた。
「な、なななっなにするのよっ!?」
「だからいっただろ? プレゼントだって」
カァーっと顔が熱くなり、心臓はありえないほどに高鳴り始める。
特に魔理沙の唇が触れた辺りは、異常に熱くなってる感じで、まるでやけどしてしまいそうだ。
そんな私を尻目にニヤニヤしている魔理沙に何か言ってやりたいけど、あまりの恥ずかしさに口をパクパク動かすだけで、声が上手く出せない。
「アリス、メリークリスマスっ!!」
そんな中、魔理沙の元気な声が部屋の中に響き渡る。
なんか最後まで魔理沙に主導権を握られちゃったのが悔しいけれど、でもたまにはこんなクリスマスもありだよね。
去年まではつまらなかったクリスマスも、今年はとっても楽しいものになりそうだし。
だって今年からは、ちょっと騒がしいけれど一緒に居ると楽しくて、思わず時が立つのも忘れてしまう、私の想い人がそばに居てくれるみたいだから―――
<あとがき>
ニゲルさんがかかれてたust配信にて書かれていた、
マリアリ絵を元にした小説です
配信中に完成させるために、急いで書いたためいつもにも増して
ひどい低クオリティですが…orz
うん、そのうち書き直します。
<追記>遅れてしまいましたが、なんとか書き直しました。
といいますか、あとから確かめてみたら元の小説書いた所要時間が
一時間でした;;
クオリティ低いはずですね…orz
まぁ、書き直した後も微妙ですが…。うぅ、精進いたします…。
あとニゲルさんにそのときのマリアリ絵を清書して挿絵としていただきました!
感動しすぎて思わず泣いてしまいそうです!!><
ニゲルさん、ホントにありがとうございました!!
|